引きこもり令嬢の契約婚約
 ぜひ彼を陰ひなたで支える素敵な女性と出会ってほしい。
 そしてそれは、セアラではありえないはずだ。

(ここに来た本当の目的を言っても、怒らないんじゃないかしら。どうせ彼も政略結婚と割り切って相手を探しているんだろうから、私みたいなのはさっさと切ってしまった方がいいでしょうし)

 セアラは迷ったが、意を決して口を開いた。

「……あの、実は、私、エリオット様の妻になりたいわけではないんです」

「おや、いきなり振られたね」

「そ、そんな滅相もない。私の事情です。私みたいな引きこもり……王太子妃になるのは無理ですからっ」

「君はそう思うんだね。だったら今日は、御父上の体面を保つために来たのかな? まあ、僕にそう言っちゃった時点でもう終わっているとは思うけど」

 エリオットは相変わらず笑顔だが、言っていることは辛辣だ。よくよく見れば、目は笑っていないかもしれない。
 セアラは背筋がすっと冷えていく感じがした。

(怒ってる? 甘かったかしら。でも、せっかく来たんだから、これだけはちゃんとお願いしないと……!)

「実は、ここに来たのは、エリオット様にお願いがあるからです」

「うん。なに?」

「ど、どうか。一度でいいんです、ホワイティ様に会わせてください!」

 ようやく言いたかったことが言えて、ほっとして顔を上げると、エリオットが驚いた顔をしていた。

(あら。笑顔以外の表情もするのね)

 のんきにそう考えて、彼の言葉を待っていると、彼はようやくセアラの言葉が届いたかのように復唱した。

「ホワイティに、会いたいんだ?」

「はい! エリオット様にお会いできれば、ホワイティ様にも会えるんじゃないかと思って」

「は、あはははは」

 なぜか大笑いされ、セアラは恥ずかしくなってきた。

「お、おかしいでしょうか」

「僕を前にしてそれを言うのもすごいなと思って。君、本当に王太子妃には興味が無いんだね」

 セアラは小さく頷くと、本音をぽそりとつぶやいた。
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