引きこもり令嬢の契約婚約
 キャンベル公爵は苦虫をかみつぶしたような顔で、ようやく口を開く。

「まったくもって、おかしい。王族でもない娘が加護を賜るとは。これは何かあるぞ、オルセン侯爵。……こんな考えはできないか? オルセン侯爵。セアラ嬢は薬師の勉強をしているという。自分の立場を盤石にするために、聖獣に薬を盛って、いいなりにした……とか」
「まさか。聖獣がやすやすとそんな手に引っ掛かるわけはないでしょう。気持ちはわかりますが、諦めねばならんのでしょうな。……しかし、こうなるとソフィアをどうしたものか……」

 ぶつぶつと独り言をつづけながら行ってしまったオルセン侯爵を睨み、キャンベル公爵はぼそぼそと続ける。

「ふん。随分あきらめが早いじゃないか。セアラ嬢は聖獣を洗脳したのだ。あの娘こそ、おかしな能力を持っているに違いない」

 昨日、シーグローヴ侯爵家に乗り込んだはずのアドレイドは、すっかり毒気が抜けた状態で帰ってきた。
 もはや自分が王太子妃になれるなどとは思っていないようで、いい縁談を探してほしいと言ってきたのだ。

(あんな娘ではなかったはずだ。もっと……欲しいものは貪欲に取りに行く性格だ)

 あの変化には、セアラが関わっているはずだとキャンベル公爵は結論付ける。

「おそらく殿下も洗脳されているのだ。あんな危険な娘には、制裁を与えねばならない」

 自らに言い聞かせるように何度も繰り返し、キャンベル公爵は文化室に向かって歩き出した。
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