引きこもり令嬢の契約婚約


 正妃教育の講師のひとりであるソフィアが、浮かない顔でやってきたのは、それから数日後のことだ。

「ごきげんよう、セアラ様」
「ソフィア様……どうかしたのですか?」
「あら、顔に出ていたかしら。ごめんなさいね」

 ソフィアはすぐに表情を切り替えると、後ろについていた護衛騎士のレナルドを振り仰ぐ。

「レナルド。しばらく休憩していていいわよ」
「では、廊下でお待ちしています」
「そういうのを休憩とは言わないわ。庭でも散歩していらっしゃい」
「しかし……」

 反論のありそうなレナルドを追い出し、ソフィアは息をつく。

「で、どうされました?」
「……休憩の時間に話すわ。やるべきことはちゃんとしないと。さ、今まで教えたことの振り返りから行いましょう?」

 お客様を迎えてから席に着くまでの想定での動き、姿勢。お茶会を催す場合の招待状の書き方、気を付けるべき点など。想定ごとの動きや注意すべき点を確認していく。

「お疲れ様。休憩しましょうか」

 ソフィアはベルを鳴らし、メイドを呼びつける。彼女たちは待ち構えていたように、お茶の用意を始めた。

「……そろそろお教えすることも無いわね。セアラ様は物覚えがいい、よい生徒だったから」
「ソフィア様の教え方が上手だからよ」

 今のセアラは、背筋も伸び胸を張っているからか、以前に比べ風格が出た。
 結局は本人の自信の無さが表に現れていたことによる弊害だったのだ。
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