引きこもり令嬢の契約婚約
子供の立場でオルセン侯爵を見ると、理不尽なことが多すぎる。しかし、国の忠臣という観点で見れば、オルセン侯爵の行動には一貫性があるのだ。
彼は、国にとって揺らいではならない大事な家門に対して、ソフィアを嫁がせようとしている。
「オルセン侯爵は学生の頃から優秀だったと、父から聞いたことがあります。あらゆることの采配を握り、それを成功に導いてきたと。だけど、一方で、彼が信頼を置いている人物は少ないのではないでしょうか」
実際、セアラの父もそこまで信頼はされていないだろう。いざとなれば家庭を取る人間だと認識されており、頼りにされることは少なそうだ。
「でもソフィア様には違う。どこに嫁がせてもその務めを果たしてくれると信頼している。だからこそ、重要な家門であるアルドリッド辺境伯家に嫁がせようとしているのではないでしょうか」
オルセン侯爵は、国の未来を常に案じているのだ。
ソフィアは意外な顔をしたが、やがて納得したように頷いた。
「……そういうこと? で、セアラ様はお父様の言うことが正しいと、そう言いたいの?」
セアラはゆっくりと首を振る。
「いいえ。オルセン侯爵がこういった考えで、縁談を用意したのではないかと推察しただけです。ただ、侯爵様にどんな意図があったとしても、ソフィア様にはあなたの意思を貫く権利があります。侯爵様の優先事項は、国の安泰です。それさえ分かっていれば、ソフィア様なら、侯爵様を説得することができるでしょう?」
ソフィアはしばらくセアラをじっと見たあと、笑い出した。
「ふふ。案外したたかね、セアラ様。そうね。私がオルセン侯爵位を継ぐことで、どれだけ国を安寧に導けるか説得できればいいのよね」