引きこもり令嬢の契約婚約
しばらくすると、ノックの音がした。
レナルドが戻って来たのかと思い「入ってください」と気軽に告げると、入ってきたのはエリオットだった。
「授業は終わっているかな、セアラ」
「まあ、エリオット様」
セアラとソフィアは慌てて立ち上がり、彼を迎え入れる。
「そんなにかしこまらなくていいよ。ちょっと話があって。急なんだけれど、一緒に旅行に行かないかなと思って」
「まあ、どちらへ?」
「アルドリッド辺境伯領だ」
先ほど話題に出たばかりの家門だ。セアラとソフィアは顔を見合わせる。
「どうしたんだい? 変な顔をして」
エリオットが腰かけながらふたりの顔を見比べる。ソフィアがため息とともに説明を始める。
「実は、父が私に、そちらのご令息との縁談を持って来まして。お相手は十五歳だっておっしゃるのよ」
「オルセン侯爵が?」
「ええ。もう、あり得ないわ。年齢的なことを言っても、私より妹の方が釣り合うでしょうに」
膨れたソフィアにエリオットは苦笑を返す。
「断る気なのかい」
「もちろんです。セアラ様に助言もいただきましたので、これから父を説得しますわ。もめた場合は、エリオット様、後押しよろしくお願いしますわね」
「はいはい」
ソフィアとエリオットが気安い会話をしていると、再びノックの音がする。今度こそレナルドだろう。
「入ってください」
「失礼します。授業は終わられましたか?」
「来たわね、レナルド。さ、私たちは帰ります。せっかくですから、エリオット様はゆっくりしていらして」
ソフィアはレナルドを追い立て、そそくさと部屋を出ていく。