引きこもり令嬢の契約婚約
「いいや。いつか必ず駄目になるはずだ。殿下の母親のようにな。その時にアドレイドお前が……」
「お断りだわ。私に嫁き遅れになれというの? ……お父様、おかしいわ。どうしてそんなに王太子妃にこだわるの。私が幸せになれる相手は別に……」
「王太子妃になれなければお前に価値などない!」

 いきなりの暴言に、アドレイドは言葉を失った。キャンベル公爵はギラギラした瞳で、アドレイドを睨みつける。

「いいから私の言うことを聞け」

 しかし、これで折れるようなアドレイドでもない。父親を睨み返し、踵を返した。

「学校に行くわ。……もうお父様の言うことなど聞かない」
「待ちなさい。アドレイド」
「あなたは私を愛しているわけじゃない。王太子妃になれる器としか見ていないのよ。そんな親、こっちから願い下げだわ」

 メイドを連れて馬車に乗ってからも、アドレイドの苛立ちは収まらない。

「いくらなんでもおかしいわ、お父様。何もしでかさなければいいのだけど……」

 もし父が何かしでかせば、自分も立場がなくなるのだ。

(どうしましょう。誰かに相談する? だけど、相談できるような人なんて……)

 友人やとりまきならばたくさんいる。しかし、弱みを見せてもいい相手となると思いつかない。

「お父様を止められるようななにか……」

 アドレイドは不安を感じながら、考えを巡らせていた。
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