引きこもり令嬢の契約婚約


 久しぶりに登校したアドレイドだったが、学校の雰囲気は決していいものではなかった。

「まあ、アドレイド様ようやくいらっしゃったの」
「結局王太子妃にもなれないのでしょう? あんなに威張っていたのにね」

 取り巻きだった女生徒たちも、今は遠巻きにアドレイドを見ている。

(まったく不愉快だわ。どいつもこいつも)

 悔しくてたまらない。こんなことなら、どんな手を使ってでもセアラを蹴落とすべきなのではという考えもよぎる。

(……いいえ。ダメだわ。そんなのむなしいだけよ)

 とはいえ、すっかり授業に出る気もなえてしまった。アドレイドはそのまま中庭の方へと足を向ける。

(学校に来ているのに授業に出ないのは、初めてですわね……)

 すでに授業は始まっていて、窓を開けているであろう教室から、教師の声が聞こえてくる。

(人に見つからないところは……)

 図書館の裏手には、ベンチが置いてあるスペースがあったはずだ。閲覧室からは見える位置だが、今は授業中なので図書館にこもっている人もいないだろうから、見つかりはしないだろう。
 そこで、ゆっくり時間をつぶそうと思ったのに、先客がいる。

「まあ、イヤですわ。さぼっていらっしゃるの?」
「なんだよ。お前。自分だってそうだろ」

 ダークブラウンの髪の少年が、アドレイドを睨みつけてくる。

(……見たことのないご令息ね)

 アドレイドは夜会の常連だ。社交界に知らない者はいない。

(セアラ様のような、引きこもりの令息かしら)
< 163 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop