引きこもり令嬢の契約婚約
「へぇ。大変ね。あなた、お名前は?」
「ハワード・アルドリッド」
「ああ。アルドリッド辺境伯のご令息なのね」

 アルドリッド辺境伯領は、オズボーン王国との戦時中、戦地となった場所だ。キャンベル公爵をはじめ、多くの高位貴族が物資の援助を行ったものだ。
 確か、当時の辺境伯は戦争中に亡くなり、今はその弟が継いでいるのでなかったか。

「令息ではないな。俺は前辺境伯の息子で、今の辺境伯は叔父上だ」
「まあ、そうなの。でしたらその縁談は叔父様が?」
「ああ。叔父上は結婚していない。だから次期辺境伯は俺ということになる。叔父上からすれば、早めに領地運営を任せられるような令嬢を見繕っておきたいということなんだろう」

 構図としては、典型的な政略結婚だ。その叔父が、甥に爵位を返そうと考えているだけまともだと言えるだろう。

「では、仕方ないのではなくて? 今の話を聞いているだけでも、あなたの叔父様は善良な人のように思えるけど?」
「そうだ。だからこのまま、叔父上が辺境伯を続けたほうが領民の為にもなる。俺みたいな、頭がいまいちな奴が領主になるよりな」

 どうやら複雑なお家事情がありそうだ。それでも、父と共に王太子妃の立場を欲していた自分たちと比べれば、随分と善良な悩みだと言えるだろう。

「あなたが叔父様に負けないくらい学もつければよろしいんじゃないの? こんなところでさぼっている場合ではないのではなくて?」
「うるせぇな。自分もさぼっているくせに」
「私は自分の学力に自信がありますもの。そもそも今学期の学習はすでに終えています」
「なっ……」

 ぐうの音も出ないのか、ハワードは口ごもってしまった。
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