引きこもり令嬢の契約婚約
 やがて馬車は修道院につく。

「ありがとう。無事に修道院についたわ」

 礼を言うと、ハワードはきょとんとしたまま、一緒に馬車を降りる。

「ここで待ってるよ。帰りも護衛が必要だろ?」
「え……」

 そこまで付き合ってくれるとは思わず、アドレイドは一瞬目が点になる。
 ハワードが降りると辻馬車は走り出してしまったので、アドレイドは彼の声に甘えることにした。

「そうね。お願いするわ」

 連れだって修道院に入り、出てきたシスターに叔母との面会を申し入れる。二人は面会室に通され、シスターが叔母を迎えに一度出る。

「俺、前庭で待ってるよ」
「……なんか、悪いわね」
「部外者が聞く話でもなさそうだしな」

 ハワードが出ていくと、面会室は途端にシンとする。何となく寒く感じて、身震いをした。
 アドレイドが物心ついた頃、叔母は王城を辞し、しばらく公爵家に住んでいた。
 子供の目にもきれいな人で、幼心に憧れをいただいていたものだ。やがて修道院に行き、顔を合わせることはほとんどなくなっていた。

 扉が開き、入ってきた叔母を見て、アドレイドは息を飲む。
 彼女は当時の美しさを残しつつも、華やかさは失っていた。修道服は紺色をベースとしたもので、化粧は薄く、肌艶も悪く見える。叔母は穏やかそうに微笑んだが、幸せそうには見えなかった。
 アドレイドが言葉を失くしていると、叔母の方から話しかけてきた。

「まあ、本当にアドレイドだわ。すっかり大きくなって。どうしたの? 会いに来るなんて初めてじゃない」
「叔母さま、ご無沙汰しております」
「ほんとね。兄様やお義姉様、デスモンドは元気?」
「ええ。両親は相変わらずだし、お兄様も文官のお仕事で忙しそうですわ」

 近況を告げた後、アドレイドは、聖獣の加護を得たセアラが王太子妃候補になってもなお、アドレイドの王家への輿入れを諦めない父について説明した。

「お父様の説得に協力してほしいのです。私自身はもう、王太子妃になることは諦めています。それよりも、新たな出会いを得て、自分の居場所を作りたいのです」

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