引きこもり令嬢の契約婚約
*
修道院を出た後、辻馬車を捕まえるために歩きながら、アドレイドは洗いざらい話してしまった。
「すげぇな。お前の父親。真っ黒じゃん」
「……私も叔母さまも共犯だったということよね。証言するべきだと思うけど、そうしたら自分の未来がない。私はどうしたらいいのかしら」
「そりゃお前……」
ハワードもその後の言葉が続かない。
正義を貫くことは大事だが、自分の立場が悪くなると分かっていて、そうできる人間など、どのくらいいるのだろう。
アドレイドの心は、ぐらぐら揺れている。
このまま沈黙を続ければ、アドレイドは公爵令嬢として暮らせるだろう。しかし父が執着を捨てない限りは、独身でいつか王妃の席が空くのを待つだけの人生になる。
(そんなの嫌よ)
しかし、父を告発すれば、アドレイドの立場自体が無くなるのだ。
そんなに簡単に、思い切れるわけがない。
「……保身に走っても、誰も責めないだろ」
頭上から、思いもかけない言葉が聞こえた。
驚きのまま見返せば、ハワードは首の後ろを押さえながら、ぽそりと言った。
「戦場では、自分の身を守ることが一番なんだ。この状況でお前が保身に走るのは、おかしなことじゃない」
「そう……よね。……でも」
迷っている。このままで、本当に自分は守られることになるのかと。
「ねぇ、あなたは迷った時、どうする?」
「あ?」
ハワードはちらりとアドレイドを見ると、真面目な顔になった。
「迷ったときは、直感に従う。とっさの動きには、本心が出るもんだ。理性で答えが出ないときは、頭を空っぽにして動く」
「頭を……空っぽに……」
そんなこと、意図的にできるとは思えない。不安と苛立ちが、頭の中でぐるぐるする。
公爵令嬢ではない自分に価値などない。うぬぼれたアドレイドだって、そのくらいはわかるのだ。
(自分の全てを捨てられるわけがないわ)
だけど、このままでもいられない。アドレイドの目は、醒めてしまったのだ。
「……城に行くわ。エリオット様にお話があるの」
修道院を出た後、辻馬車を捕まえるために歩きながら、アドレイドは洗いざらい話してしまった。
「すげぇな。お前の父親。真っ黒じゃん」
「……私も叔母さまも共犯だったということよね。証言するべきだと思うけど、そうしたら自分の未来がない。私はどうしたらいいのかしら」
「そりゃお前……」
ハワードもその後の言葉が続かない。
正義を貫くことは大事だが、自分の立場が悪くなると分かっていて、そうできる人間など、どのくらいいるのだろう。
アドレイドの心は、ぐらぐら揺れている。
このまま沈黙を続ければ、アドレイドは公爵令嬢として暮らせるだろう。しかし父が執着を捨てない限りは、独身でいつか王妃の席が空くのを待つだけの人生になる。
(そんなの嫌よ)
しかし、父を告発すれば、アドレイドの立場自体が無くなるのだ。
そんなに簡単に、思い切れるわけがない。
「……保身に走っても、誰も責めないだろ」
頭上から、思いもかけない言葉が聞こえた。
驚きのまま見返せば、ハワードは首の後ろを押さえながら、ぽそりと言った。
「戦場では、自分の身を守ることが一番なんだ。この状況でお前が保身に走るのは、おかしなことじゃない」
「そう……よね。……でも」
迷っている。このままで、本当に自分は守られることになるのかと。
「ねぇ、あなたは迷った時、どうする?」
「あ?」
ハワードはちらりとアドレイドを見ると、真面目な顔になった。
「迷ったときは、直感に従う。とっさの動きには、本心が出るもんだ。理性で答えが出ないときは、頭を空っぽにして動く」
「頭を……空っぽに……」
そんなこと、意図的にできるとは思えない。不安と苛立ちが、頭の中でぐるぐるする。
公爵令嬢ではない自分に価値などない。うぬぼれたアドレイドだって、そのくらいはわかるのだ。
(自分の全てを捨てられるわけがないわ)
だけど、このままでもいられない。アドレイドの目は、醒めてしまったのだ。
「……城に行くわ。エリオット様にお話があるの」