引きこもり令嬢の契約婚約

辺境伯領へ

 エリオットとセアラが旅行に行く間、ソフィアには、エリオットから密命を受けていた。
『二十五年前から今に至るまでの、オズボーン王国との国境通行記録を確認し、キャンベル公爵の関わっているものがないか確認すること』
 あからさまにキャンベル公爵を疑う内容なので、一文官に任せるわけにもいかなかったのだろう。

 ソフィアにしてみれば、こうして王太子のもとで働けるのは、実績作りの為にもいい。もう王太子候補でもないのだから、次回の文官試験を受験し、一文官として働くつもりだ。

 今回、ソフィアの後ろ盾となってくれたのは、シーグローヴ侯爵だ。
 エリオットとセアラから頼まれて、彼が断われるはずはなく、王城にある過去資料保管庫への入室許可を取るために奔走してくれた。
 おかげで現在、ソフィアはレナルドと共に薄暗い保管庫の中で、資料を一冊一冊あたっているのだった。

(資料によれば、オズボーン王国との国交の回復は戦後から。けれど、アルドリッド辺境伯領では、細々と貿易が行われていたのね)

 アルドリッド辺境伯領は地形的に言えば、本国よりもオズボーン王国に近い。
 王都との間には、険しい山がまたがっており、行き来に時間がかかるのだ。その点、国境の川があるとはいえ、オズボーン王国とは平地続きだ。食料品など鮮度重視の物資は、昔からオズボーン王国から入荷している方が多い。
 ブライト王国とオズボーン王国とはずっと戦争していたわけではない。攻め込まれ、聖獣が押し返しを繰り返し、時々休戦期間を設けたりもしている。

(戦時中も、食料品の輸入にはあまり制限がかけられなかったのね)

 国同士が戦争しているとはいえ、国境に住む人間同士が不仲ではなかったのだろう。

 今ソフィアが見ているのは、国境の入出国記録だ。 

(この商会の出入りが多いわね)

「レナルド。この商会の輸入品目を調べてくれる?」
「はい」

(……あら?)
< 174 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop