引きこもり令嬢の契約婚約
「だって私たちはモノじゃないもの。心が動かなければ、全力なんて出せない。……お父様が馬鹿にしていたセアラ様は、私の心を動かしたわ。あの方は人が何を望んでいるかをじっくり観察して、ヒントをくれる。私たちは答えが欲しいわけじゃないのよ。生きているのだから、未来は自分の手でつかみたいの。そして、自分の未来を預けるなら、彼女みたいな人がいいの」

 オルセン侯爵の顔から、表情が消える。わずかに震え、唇をかみしめ、そして沈黙ののちにようやく絞り出した。

「……お前の望みはかなわないだろう? 女が爵位を継ぐことはできない。だったら、その能力を最大限に生かせるところに嫁がせたいと考えた私が愚かだというのか」
「お父様が、自分の考える限りで最善の未来を提示してくれているのはわかるわ。でもね、私は、今の常識で私の未来を量りたくないの。法が壁であるなら、壁を作り直せばいい。私たちは、それができる。若いのだもの」

 まっすぐに言い切ったソフィアに、オルセン侯爵はついに折れた。

「はっ、私を年寄り扱いする気か」
「常識を覆せない時点で、若くはないわ」
「……いいだろう。そこまで言うなら、私にお前の結果を見せるといい」
「話はまとまったな? アドルフ、お前の娘は立派だよ。こんなに堂々としている女性を私は見たことがない。お前が育てたんだ。そうだろう?」

 シーグローヴ侯爵が間に入り、少し空気が和む。

「……そうだな。だが頑固すぎる。女性にふさわしい柔らかさが足りない娘だ」
「お嬢はかっこいいからいいんですよ」

 にこにこというレナルドに、盛大なため息を吹きかける。

「では話は変わりますけど、お父様とシーグローヴ侯爵様。一つ教えていただきたいことがあるのです。二十五年前から、キャンベル公爵様のたびたびの出国記録があります。聖獣研究というのは、他国にまたがってまで行われるものなのですか?」
「ああ……それは、半分キャンベル公爵の私的研究だろう。彼の祖父が王族で、聖獣について知識が豊富なのだ。それで、聖獣に関する書物の管理を任されていた」
「そうなのですね」
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