引きこもり令嬢の契約婚約
「これは提案なんだけれど、僕と婚約して一年後に破棄するとしよう。その場合、侯爵家には王家から多額の賠償金が支払われるし、君も田舎に引きこもる理由になるのでは。もちろん、君の経歴には傷がつく。それに他の誰かと結婚したいというなら足かせにもなるだろう。だからどうしてもとは言えないけれど」
セアラは別に結婚したいわけではない。田舎にひとりで引きこもれるなら歓迎ではある。
「それに、僕のそばにいれば、ホワイティに会える確率は上がるよね」
「……! それはっ」
正直、これまでの提案で一番魅力的な言葉だ。
「ホワイティ様に会わせていただけるんですか?」
「彼女がいいと言えばいつでも。僕の傍にいたほうが確率は上がると思うよ」
「でしたら……」
セアラの頭を一瞬警告が霞める。そんな簡単に安請け合いして、本当にいいのか、と。
しかし、幼少期からあこがれてきたホワイティと、どうしても会いたい。話がしたい。そのために、気の進まない見合いの場にも出てきたのではなかったのか。
「……わかりました!」
返事と同時にエリオットが笑う。ぎくりとしながらも、出してしまった言葉は取り消せない。
「ありがとう。ふふ、楽しみだな」
温厚な王子という評判に間違いはないが、それにしたって思っていたよりずっと腹黒くはないだろうか。
セアラは自分の選択が正しかったのか、屋敷に戻ってからもずっと自問自答し続けるのだった。