引きこもり令嬢の契約婚約

「これは提案なんだけれど、僕と婚約して一年後に破棄するとしよう。その場合、侯爵家には王家から多額の賠償金が支払われるし、君も田舎に引きこもる理由になるのでは。もちろん、君の経歴には傷がつく。それに他の誰かと結婚したいというなら足かせにもなるだろう。だからどうしてもとは言えないけれど」

 セアラは別に結婚したいわけではない。田舎にひとりで引きこもれるなら歓迎ではある。

「それに、僕のそばにいれば、ホワイティに会える確率は上がるよね」

「……! それはっ」

 正直、これまでの提案で一番魅力的な言葉だ。

「ホワイティ様に会わせていただけるんですか?」

「彼女がいいと言えばいつでも。僕の傍にいたほうが確率は上がると思うよ」

「でしたら……」

 セアラの頭を一瞬警告が霞める。そんな簡単に安請け合いして、本当にいいのか、と。
 しかし、幼少期からあこがれてきたホワイティと、どうしても会いたい。話がしたい。そのために、気の進まない見合いの場にも出てきたのではなかったのか。

「……わかりました!」

 返事と同時にエリオットが笑う。ぎくりとしながらも、出してしまった言葉は取り消せない。

「ありがとう。ふふ、楽しみだな」

 温厚な王子という評判に間違いはないが、それにしたって思っていたよりずっと腹黒くはないだろうか。
 セアラは自分の選択が正しかったのか、屋敷に戻ってからもずっと自問自答し続けるのだった。
< 18 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop