引きこもり令嬢の契約婚約
 山を上りきったあたりで、突然、馬車が停まった。

「なんだろう」

 エリオットが立ち上がる。耳を澄ませば、剣劇の音がする。
 エリオットは眉を顰め、セアラを守るように前にでて、馬車の外の護衛に声をかける。

「何があった?」
「どうやら先の方で山賊が出たようです。護衛を数人救出へ向かわせても?」
「もちろんだ」

 セアラたちが乗る馬車は動きを止め、護衛一人を残し、残りが事件現場に向かった。

「山賊なんて……大丈夫かしら」
「ここ数年は、聞いたことがなかったけれど。かつては山賊に馬車が襲われることはあったようだ」

 エリオットは、荷物として置いておいた剣を腰に下げる。
 とはいえ彼はそこまで剣術が得意なわけではないのだ。最低限自分の身を守るための剣術しか習得していない。

「エリオット様、山賊は撤退させたのですが、平民の娘が倒れていて……」

 馬車の外からの声に、エリオットは立ち上がる。

「状況を確認してくるよ。セアラは危ないから動かないで」
「はい」

 彼が出ていくと、途端に心細くなる。手持無沙汰なのも相まって窓から外を見ていた。
 エリオットが駆け寄った先には、騎士の上着を肩から掛けた、力なくうなだれている女性がいる。はっきりとは見えないが、その下の衣服は、破れている部分もありそうだ。

(まさか、山賊に襲われたんじゃ……)

 護衛の騎士たちは全員男性だ。もしそうだとしたら、いくら助けてくれた相手とはいえ恐怖を感じるのではないだろうか。
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