引きこもり令嬢の契約婚約
 今はドルフによって時が止められているので、彼らも当然動いていない。

「……っ」

 エリオットは駆け寄り、セアラを抱き上げる。

『ねぇ、ネルの気配がしないわ。あの子はどうしたのかしら』

 ホワイティが心配そうにきょろきょろする。エリオットはセアラの右腕のあたりをまさぐる。いつもなら、その辺に潜り込んでぬくぬくとしているのに、今はいないようだ。

「ドルフ、一度時を動かしてもらってもいいかい?」
『構わないが、全部動き出すぞ? お前が先ほどの位置から消えていると、護衛たちは大騒ぎになるんじゃないか?』
「あ、それはそうか」
『なにか紙にでも書いてくれれば、私が届けてあげるわよ』

 ホワイティに言われ、エリオットは自分の服をまさぐるが、あいにくインク瓶もなにもない。

『セアラが持っていると思うわ。あの子、知らない植物を見かけると書き留めるから。黒鉛とメモ用紙はいつも』
「へぇ。ホワイティ、よく知ってるね」
『あなたのお相手候補だもの。目を皿のようにしてチェックしたのよ』

エリオットは心の中でセアラに謝り、ドレスの襞に隠れている隠しポケットを探る。

「あった」

 意図合って不在にしていることをしたためて、ホワイティに託した。

「頼んだよ、ホワイティ」
『任せて。ドルフ、そっちは頼んだわよ』
『なんで俺が……まあいい。フィオナもエリオットのことは心配しているからな』

 しぶしぶと頷き、ドルフは止めていた時を動かす。
 エリオットは、セアラをぎゅっと抱きしめ、無事に目覚めてくれることを祈るのみだ。

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