引きこもり令嬢の契約婚約
*
エリオットの護衛騎士であるローランドは、山の斜面を見上げ、唇を噛みしめていた。
守るべき主がいつの間にか消えていたのだ。彼を見失ったことは自分の失態にほかならず、【心配しないで】という書付をもらったところで、心労が減るはずなどなかった。
そんな風に周囲への警戒を強めていた彼は、山の斜面からの葉擦れの音をとらえる。
やがて足音や話し声も近づいてきて、エリオットの姿が見えた時には、ようやく胸につかえていたものが、消えたような感覚だった。
「エリオット様!」
「やあ。待たせたね。ローランド。ごめんよ、心配かけて」
エリオットはセアラを支えながら降りてくる。その後に、先ほど襲われていた平民の女が続き、その頭上を、聖獣ホワイティが、羽を広げて飛び回っていた。
「いったい何があったのですか!」
「説明は後でするよ。予定通りアルドリッド辺境伯家に急ごう。日が暮れてしまう」
「ええ。では……」
ちらりと馬車を見る。
馬車はこの一台だけだ。騎士たちは、馬で並走している。
「この女性は僕たちと一緒に馬車に乗せる」
「……かしこまりました」
ローランドは疑念のこもる視線を平民の女性に向けた。
エリオットは何でもないと言うが、セアラは人の迷惑になるようなことを率先してやるような女性ではない。
姿を消したことに理由があるのなら、この平民の女が原因ではないかと思っていたのだ。
「ローランド、大丈夫だから」
エリオットに言われ、ローランドは無意識に女性を睨んできたことに気づいた。
「エリオット様、私も同乗してはいけませんか? 御身に何かあっては」
「僕とセアラと彼女とホワイティが乗ったら、馬車はいっぱいだよ。……ローランド。気持ちはうれしいけど、大丈夫。ホワイティやネルがいてくれるからね」
エリオットが手を上げると、ホワイティが腕に乗ってきた。
「では……」
ローランドの目の前を通って、セアラと平民の女性が馬車に乗り込んでいく。せめて突然ふたりが姿を消した説明をしてほしいと思ったが、その機会を得られないまま、馬車の扉は閉められてしまった。
エリオットの護衛騎士であるローランドは、山の斜面を見上げ、唇を噛みしめていた。
守るべき主がいつの間にか消えていたのだ。彼を見失ったことは自分の失態にほかならず、【心配しないで】という書付をもらったところで、心労が減るはずなどなかった。
そんな風に周囲への警戒を強めていた彼は、山の斜面からの葉擦れの音をとらえる。
やがて足音や話し声も近づいてきて、エリオットの姿が見えた時には、ようやく胸につかえていたものが、消えたような感覚だった。
「エリオット様!」
「やあ。待たせたね。ローランド。ごめんよ、心配かけて」
エリオットはセアラを支えながら降りてくる。その後に、先ほど襲われていた平民の女が続き、その頭上を、聖獣ホワイティが、羽を広げて飛び回っていた。
「いったい何があったのですか!」
「説明は後でするよ。予定通りアルドリッド辺境伯家に急ごう。日が暮れてしまう」
「ええ。では……」
ちらりと馬車を見る。
馬車はこの一台だけだ。騎士たちは、馬で並走している。
「この女性は僕たちと一緒に馬車に乗せる」
「……かしこまりました」
ローランドは疑念のこもる視線を平民の女性に向けた。
エリオットは何でもないと言うが、セアラは人の迷惑になるようなことを率先してやるような女性ではない。
姿を消したことに理由があるのなら、この平民の女が原因ではないかと思っていたのだ。
「ローランド、大丈夫だから」
エリオットに言われ、ローランドは無意識に女性を睨んできたことに気づいた。
「エリオット様、私も同乗してはいけませんか? 御身に何かあっては」
「僕とセアラと彼女とホワイティが乗ったら、馬車はいっぱいだよ。……ローランド。気持ちはうれしいけど、大丈夫。ホワイティやネルがいてくれるからね」
エリオットが手を上げると、ホワイティが腕に乗ってきた。
「では……」
ローランドの目の前を通って、セアラと平民の女性が馬車に乗り込んでいく。せめて突然ふたりが姿を消した説明をしてほしいと思ったが、その機会を得られないまま、馬車の扉は閉められてしまった。