引きこもり令嬢の契約婚約

「あの騎士様、俺のこと、すっげぇ睨んでいた」
「それはそうよ。彼は騎士として正しい行動をしているわ」
「ローランドは強いからね。取っ捕まりたくなければ、ちゃんと僕たちの指示に従うんだよ」

 平民の女性──少年ホレスは、上目遣いで機嫌をうかがうようにセアラとエリオットを見た。

「わかってるよ」
「まずは、ホレス君の言う〝領主様〟がアルドリッド辺境伯と同一人物であるか、確認しなくてはいけません」

 セアラが最初に疑問に感じたのは、その〝領主様〟が、セアラが聖獣を洗脳した、とホレスに言ったことだ。
 セアラが聖獣の加護持ちとなったことは、もちろん高位貴族には伝えられているだろう。しかし、それは城での話だったはずだ。王都から離れた場所にいる貴族たちには、結婚式で伝えられるはずだったのだ。
 とはいえ、貴族同士の交友の際に伝わっていくことももちろん考えられるため、アルドリッド辺境伯が知っていてもおかしくはない。
 だから、まずその点をはっきりさせるべく、ホレスに確認させたいと思ったのだ。

「もし、領主様がアルドリッド辺境伯でなければ、彼の領地で領主の名をかたった詐欺が行われているということになります。逆に本人ならば、王家が決めた婚姻に不満があると捉えることができるでしょう」
「アルドリッド辺境伯が、僕の結婚に不満を持つとは思えないんだよな。本人は結婚していないし、跡継ぎの前辺境伯子息もいる。王家と縁故を持ちたいとは思っていなかったはずだ」
「もっと別の不満を抱えているかもしれませんしね。アルドリッド辺境伯は、土地柄、苦労してきたはずです。陛下が支援していないとは思いませんが、自分たちだけが戦争で被害を受けることについては、思うところがあるかもしれません」

 エリオットも頷く。オスニエルが言ったように、オズボーン王国が侵攻してきた際、戦場となったのは、国境付近だ。
 犠牲になったものが国を恨むのは、やむを得ない面がある。
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