引きこもり令嬢の契約婚約
 セアラの目は、エリオットが驚くほど冷静だった。

 普段は気弱な面も多くあるが、今は毅然としていて見ほれてしまうほどだ。

「ホレス君にとっては、領主様がすべてだったのよね? わかるわ。でもね、私はこれだけは誓える。私は聖獣様を意のままに操れるほどすごい人間ではないわ。ネルちゃんは、彼女の意思で私に力を貸してくれたの。あなたの領主様が言ったことは、間違いだったのよ」
「……う、うん」

 断言されれば弱いのだろう。ホレスはその後押し黙った。人の言葉を、正しいかどうか自分で精査するだけの思考力が、この子にはないのだ。

 セアラは彼の頭を軽く撫で、エリオットに向きなおった。

「これを聞いたら、この子ばかりを責められはしないでしょう?」
「でも君は殺されそうになったんだ。ドルフとオスニエル様が来てくれたから見つけられたけれど、もし君が死んでいたら、僕は絶対にこの子を許すことはできない」
「そう言ってくださるのはうれしいですが、この子もまたこの国の民です。あなたの守るべき民ですよ。簡単に切り捨ててはダメです。もちろん、罪に対する償いは必要ですが」

 唇を真一文字にしているエリオットの頬を両手で挟んだ。思いのほか冷たく、ほぐすつもりで、頬をこね回す。

「ほら、私、結果として生きています。だから大丈夫。……大丈夫ですよ」
「セアラ」

 エリオットは深く息を吐きだした。

「終わったことよりも、皆で幸せになる方法を考えましょう」
「セアラ……」

 微笑んで見せれば、エリオットが抱き着いてくる。

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