引きこもり令嬢の契約婚約
執着を貫く者
山越えをし、一行は北へ向かう。
「ホレス君の村は、どっちにあるの?」
「オズボーン国との国境の近く。森の中にあるんだ」
「本当の国の端か。一番東端は出入国管理が行われているインデス町だと思っていたが」
「……他の町や村のことはよくわからない」
ホレスは途方に暮れた様子だ。
地理も頭に入っていないのなら、犯人は最後、この子をどうするつもりだったのだろう。
「私を置き去りにした後は、どこに行くつもりだったの?」
「迎えに来てくれるって言っていたよ。来た道を戻って来いって。あの塹壕から、獣道をまっすぐオズボーン王国側に向かって、山を下りたところに」
「そう」
そこに本当に迎えが来ているかは怪しい。むしろ、証拠隠滅を図られる方が可能性としては高いだろう。
「あなたが来なければ、慌てて何か動き出すかもしれないわね」
ここから先は、相手の出方によっても変わってくる。
「あとは辺境伯家についてから考えましょう? ところで外を見てもいいですか?」
「うん?」
「初めて見る土地なんです。変わった植物もあるかもしれません」
先ほどまでの冷静な表情とは打って変わって、目を輝かせたセアラは、興味津々にあたりに目をやる。
『セアラは相変わらずだねぇ……』
面白がっているような、呆れているような声が、服の中から聞こえてきた。