引きこもり令嬢の契約婚約
 ホワイティに見張りを頼み、ホレスは部屋で、エリオットとセアラは貴賓室で辺境伯と共に食事をいただく。

「いやはや、かわいらしい婚約者殿だ。殿下がお幸せそうで何より」
「そうだろう? シーグローヴ侯爵ときたら、ずっと隠していたんだ」
「お父様は関係ないです。私が引きこもりだっただけで……」

 食卓は和やかな雰囲気だ。辺境伯は使用人との仲も良好そうで、料理の説明などは楽しそうに聞いている。

「恥ずかしながら、もてなしには自信がなくて。失礼があったらすみません」

 体つきを見ても、騎士のように鍛えている。土地柄、体を張って動き回ることの方が多いのだろう。

「ところで、ひとつ聞いてもいいだろうか」

 おもむろに、エリオットが口を開く。

「アルドリッド辺境伯領は、戦時中、最も被害を受けた地域だ。各領主からの支援もあったと聞く。その支援者の中に、キャンベル公爵はいるだろうか」
「ああ、キャンベル公爵様」

 アルドリッド辺境伯は、ぱっと顔を晴れ渡らせた。

「キャンベル公爵は、最も支援に力を入れてくださった方です。何度も自ら駆けつけてきてくださり、私の手の届かない部分への支援に力を貸してくださいました」
「そうなのか。ぜひその話を聞きたいな」
「私には妻がいないでしょう? どうしても細やかな気配りが不得手でして。その点、キャンベル公爵は違います。孤児への支援計画や、復興計画など、先を見越した提案をたくさんしていただきました」

 アルドリッド辺境伯は、随分とキャンベル公爵に心酔している様子だった。

 今回のことを伝えていいのかエリオットは悩み、セアラと目配せして、とりあえず今は伝えずに様子を見ることにした。

「ところで、事前にお願いしたように、今夜内密でオスニエル殿下が来られる。あくまでも非公式だ。一室を借りていいだろうか」
「分かっております。聖獣の導きにより来られるとか……。扉を開けておかずともよろしかったのですよね。いったいどのようにしていらっしゃるのか」

 アルドリッド辺境伯は、純粋な疑問と感嘆の声を上げる。

「さすがは聖獣様です」

 セアラの見たところ、アルドリッド辺境伯は善人だ。聖獣に対する尊敬の念もあり、王族への信頼感も確かなようだ。
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