引きこもり令嬢の契約婚約
 食事を終え、セアラたちは一室に集まる。

「そろそろ時間だ」

 キーンと耳鳴りのような音がしたかと思うと、時計の打刻音が聞こえなくなる。

「時間……止まってますね」
「ああ。この能力が、ドルフが最強と言われる所以だ」

 あけ放たれていた窓から、ドルフにまたがったオスニエルがやってくる。

『待たせたな』
「何度も申し訳ありません」
「いや、今度はちゃんと、報告書も持ってきたぞ」

 昼間に一度会っているから、挨拶は簡単なものだ。

「昼間、一度戻る途中に怪しい男を見かけたぞ。獣道を、オズボーン王国側に抜けていった先だ」
「おそらく、ホレス君の回収目的でしょうね」
「回収ならいいがな。口封じのための処刑人かもしれない。実行犯を犯人に仕立てて追及を逃れるのは、悪党の常套手段だ」

 オスニエルが怖いことを言う。
 でもセアラもそう思う。殺害されたのがセアラだけだったとしても、エリオットが同乗していたのだ。当然事件が捨て置かれることはないだろうし、ホワイティが捜査に乗り出したら、見つかる確率は上がってくる。
 だから目くらましとして、明確が犯人を仕立て上げるのは、悪人側に立ってみれば賢い選択だ。

(嫌だわ……)

 でも目をそらすわけにもいかない。これからセアラが生きる世界は、こんなことが普通に起きる世界なのだ。
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