引きこもり令嬢の契約婚約
「……報告書を見せていただけますか?」
オスニエルに頼んでいたのは、キャンベル公爵とやり取りがあったという商会の存在の確認と、その輸出品目、そして、ツルリカという植物の生息の有無だ。
「ああ。結論から言うと、問い合わせにあった商会は、今はない。戦時中は、確かに存在はしていたようだ。それこそ、アルドリッド辺境伯領への食糧販売をしてもいた」
「そうですか」
エリオットは報告書に目を通しつつ、オスニエルに返事をした。
「国境にある崖に、ツルリカは確かに生えていた。これは俺とドルフで見に行ったから間違いない。ただ、本当に崖の途中にあって、あれを取るのは結構至難の業だ。よほど体重の軽い者なら、上からのロープで支えてやればなんとかできるかもな。度胸はいると思うが。なにせ、高値で取引されること自体は納得だ」
オスニエルが私見を述べている間、セアラはホレスのことを思い出していた。
まだ女性に変装できるくらい体のできていない少年が、細身とは言えセアラを抱えて、斜面を移動したのだ。おそらく似たようなことを何度も経験していたに違いない。
(孤児たちに、採らせていたのかしら。だから彼は力が強く、斜面に対しての体の使い方がうまいのかも)
「……キャンベル公爵の言っていたこととは、齟齬がありますね。詳しくは国内の調査結果もみなければわかりませんが、ハーブティの輸入というのは、嘘なんでしょう」
お茶は、そもそも輸入されていない。しかし、茶葉に入っていたハーブは確かにオズボーン王国にある。
「……オズボーン王国に密入国して、ハーブを採り、それをお茶に加工して流通させているのでしょうね」
「その線が濃厚かな。やっぱりホレスの村が怪しいね。おそらくその領主様ってのはキャンベル公爵なんだろう」
「でも、……人の領地で、勝手に村をつくるなんてこと、できるんでしょうか」
「キャンベル公爵はアルドリッド辺境伯からかなり信用されているようだったからね。もちろん、グルだという可能性も否定できない。なんにせよ。その村の場所を特定しないと」
『それなら私が捜してくるわ。夜目も聞くし、大体の場所が分かれば』