引きこもり令嬢の契約婚約

 セアラは地図を取り出し、国境線の北にある森を指差した。

「これまで聞いた話を総合すると、この森の中が怪しいと思います。南部は平地としてオズボーン王国と繋がっていますが、北に行くほど高低差があり、このあたりは崖になっているはずです。夜の方が生活の明かりがあるから見つけやすいでしょう」
『任せて。じゃあ行ってくるわ』

 ホワイティがノリノリで飛び立っていく。

「ホレスはどうする? 村に返すか?」
「少なくとも、〝領主様〟の確認はしてもらわないといけませんし、孤児でその村に住んでいる子はほかにもいるんでしょう? その全員に対して、王家としては手を差し伸べなければなりません」
「そうだね。じゃあとりあえず、一度は村に戻そう」
「で、そのキャンベル公爵とやらが黒幕だったとしたらどうするんだ? 一応国の要職についているんだろ?」

  オスニエルが腕を組んだまま、問いかける。ニヤニヤしているあたり、他国のもめごとを若干楽しんでいる様子もある。

「キャンベル公爵を懲らしめる方法に、心当たりはあるんです。でも、協力を得られるかが難しくて」

 セアラがちらりと自分の服の中にいるはずのネルに目をやる。

「どういうこと?」とエリオットが言う。

「キャンベル公爵は、聖獣に固執していました。聖獣こそが正しさの象徴で、でも自分はその声を聞くことができない。ネルちゃんが私を選んでくれたことも信じられないから、私が聖獣を洗脳したのだと思い込んでいる」
「そうだね」
「キャンベル公爵の心を、根元から折るには、聖獣が一度加護を与え、そしてその後加護を打ち切ることです。積年の願いが叶った途端に永遠に失うのは、ものすごいダメージでしょう? ただ、ネルちゃんがそのお願いを聞いてくれるとは思えないんですよね。一度でも嫌いな人に加護を与えるなんて嫌だろうし……」

 ふと顔を上げると、エリオットとオスニエルが、セアラを凝視していた。
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