引きこもり令嬢の契約婚約

 ドルフが空に飛び上がると、ブライト王国の北東部からオズボーン王国西南部を俯瞰することができた。
 辺境伯家があるこの町は北東部一大きな町であり、北はルングレン山から連なる山の一部、西は先ほど山越えをした山がある。東には大きく森が広がっており、国境は崖になっている。南に行くほど土地は平たんになり、関所が置かれている国境の町のあたりは広い平野だ。

「あそこですね」

 森の一部分が燃えている。今は時が止められているから、ただ光っているようにしか見えないが、場所が場所だけに燃え広がったら大変なことになる。

『予想通り、森の中に村があったわ。村というよりは、ただの小さな集落だけど。隠れ住んでいるような感じだったわ』
「そこが……ホレス君の村?」
『たぶんね。燃えているのはそのすぐ近くなの。今に燃え広がるわよ」
「じゃあ、早く消火しなきゃ」

 今はドルフが時を止めているので、これ以上広がることはない。今のうちになんとかできればと、セアラは考えを巡らした。
 炎の真上は危ないので、火の反対側から近づいて、高度を落としてもらう。
 確かに人の住めるような家がいくつかあるのが確認できる。森の中を切り開かれて作られているので、畑などのスペースは狭く、大した人数は住んでいなさそうだ。

「どうしたらいいかしら。ここじゃ川も遠いし、水も引けない……」
『ちょっと待ってて』

 ネルが袖口から出てきて、そのまま空中に飛び降りる。

「ネルちゃん! 危ないわ」
『大丈夫。わたし、ひとりで浮けるから』

 声が徐々に遠くなって、ネルの姿が見えなくなった。
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