引きこもり令嬢の契約婚約
 セアラはその姿に、感動した。誰に何を言われても、凛とする彼女の美しさに。

「あ、あの……」

 お礼を言おうと声をかけると、ソフィアはセアラに視線を向けた。その視線の鋭さに、再びセアラの身がすくむ。

「あなたは、もう少し表情を押さえられたらいいのでは? 高位貴族たるもの、家格の低い者に侮られてはいけませんわ」

 確かに、セアラは表情豊かだ。大きな声で笑うし、泣くときは大きな声を上げる。これまではそれを悪いことだとは思っていなかった。
 セアラはそこから言葉が出なくなった。真っ赤になって、口をパクパクさせるセアラを見つめ、ソフィアは呆れたような息をつき、「私たちは侯爵令嬢です。そのことをお忘れにならないで」とつぶやくと、そのまま背中を向けた。

 ソフィアの言っていることは正しい。だけど、自分には一生できない仕草だとも思えた。
 侯爵令嬢であるセアラよりも家格が上なのは、ふたつの公爵家と王家しかない。
 だとしたら、セアラはほとんどの人に、侮られない態度を取り続けなければならないのだ。

「……姉さま?」

 三歳下の弟のマイルズに服の裾を引っ張られ、セアラはようやく我に返る。

「あ、マイルズ。ごめんね」

「メイドがデザートを運んでくるそうです。皆さんを呼んでもいいですか?」

「ええ、私が……」

 しかし顔はこわばって、大きな声が出せない。マイルズは不思議そうな表情でセアラを見上げたのち、「皆さま、もうすぐデザートがまいります」と高らかに告げた。
 弟の姿が頼もしくもあり、その分自分が情けなくなる。

 
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