引きこもり令嬢の契約婚約

「……貴様! やはり生きていたのだな。くそっ、役立たずめ」
「や、やっぱりあなたが仕組んだのね? ホレス君の言っていた領主様って……」
「失敗しただけでなく、懐柔されたのか? はっ、やはり子供はダメだ」

 間違いない。キャンベル公爵が、ホレスのいう〝領主様〟なのだ。
 戦争孤児を集めたのは、おそらく、自分の言うことを信じて動く労働力を求めてのことなのだろう。

「子供にさせるようなことじゃないわ」
「これは正義の為だ。貴様が聖獣をかどわかしたりするから」

 話が通じない。彼を言葉で説得するのは無理なのかもしれない。

「エリオット様もここに来ています。罪を認めて、償ってください」
「私の何が罪だ? 聖獣を冒涜した貴様の方がよほど罪深い」

 キャンベル公爵の手のあたりで、光が反射した。炎を受けた赤い光が目に入り、セアラは眩しくて目をつぶる。
 次に目を開けた時には、すぐ近くまで公爵が来ていた。

(あ、ナイフ)

 光を放っていたのは、ナイフの反射なのだと気づいたとき、足元の地面が突然揺れた。

『セアラ!』
「ネルちゃん!」

 間一髪、キャンベル公爵とセアラの間に、土の壁が湧き出てきた。
 そこからぴょんとネルが飛び出してきて、セアラの肩に乗る。

『よかった。間に合った!』

 その姿を見たキャンベル公爵が、突然悲しそうに顔を覆った。

「おお、聖獣様、おいたわしい。もう大丈夫ですぞ。私が必ずあなたを救い出して見せますとも」
『何言っているの。気持ち悪い』
「ほら、こちらに」

 キャンベル公爵の手が、セアラの顔の近くに伸びてくる。ネルはくんと鼻をくすぐると、顔をしかめた。
< 211 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop