引きこもり令嬢の契約婚約
「この村は、戦争孤児を集めて作った村です。そう、私は彼らに住む場所と仕事を与えていたのです」
『ならばなぜ、今になって焼き払う?』
「ここに、あってはならないものがあったからです。そう、私は、聖獣様の為にすべてを正そうとしている」
『そうか』

 ドルフはにやりと笑うと、キャンベル公爵に近づいた。
 彼の口元が、徐々に緩んでいく。

「よ、ようやく、私が選ばれたのだ。しかも最強と言われる狼の聖獣に」

 キャンベル公爵がちらりとエリオットをみて、鼻を鳴らす。

「王位を継ぐのは、より力の強い聖獣の加護を得た者でしたな」
「……そうだ」

 エリオットは慎重に答えながら、守るようにセアラを抱きしめる。

「では私だ。狼の加護を得たのだからな」

 セアラが息を飲んで見守っていると、エリオットはうつむいて小声でつぶやいた。

「父上より年上なのに、まだそんなことを考えるのか。笑えてくる」
「聖獣様、私に力をお貸しください」

 体が触れるくらいに、キャンベル公爵の近くに寄ったドルフは、そこで『はっ』と乾いた笑いを吹きかけた。

『笑わせる。誰が加護を与えただと?』
「え? しかし、私にはあなた様の声が……」
『それは俺の力だ。初代国王の聖獣もそうだぞ? だからこそ彼らは友人になり、やがて加護を与えることとなった。お前は……その資格がない。醜くて自分勝手。見ているとはらわたが煮えくり返る』

 キャンベル公爵の頭を足場にして、ドルフは空へと飛び上がる。
 彼はあっけにとられたまま、空へかけていく聖獣を見つめていた。

「う、嘘だ。だって私には、聖獣の声が聞こえた。あれは私の聖獣だ!」

 その時、氷の粒が空から鋭い勢いで落ちてくる。キャンベル公爵の足元の土にも突き刺さり、彼は「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。

『あいつ、むかつくな』

 ドルフの声が小さく聞こえる。
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