引きこもり令嬢の契約婚約


 アルドリッド辺境伯家はにわかに慌ただしくなっていた。
 保護した村人たちの手当て、食事の用意などをし、ようやく落ち着いたのは、屋敷に戻ってから三時間後のことだ。

「さて。ではどこから話をしようか」

 辺境伯の執務室に、エリオットとセアラ、アルドリッド辺境伯、その息子のハワード、そしてアドレイドがそろっている。
 キャンベル公爵は、いまだ眠ったまま別室に軟禁されていた。
 この場の主導権をもっているのは、エリオットだ。なぜアドレイドがこの場にいるのかはいまだにわからないままだが、セアラは黙って見守ることにした。

「まずは、あの村のことを教えてほしい。アルドリッド辺境伯は、村の存在は知っていたのかい?」

 辺境伯は気まずげに小さく頷く。

「……経緯を説明してもよろしいでしょうか」
「いいよ」
「まず、あの村に関しては、キャンベル公爵に管理を一任していました」

 エリオットが片眉だけを上げて、静かに続きを促す。

「どうして? あそこは辺境伯領だし、家格が上のキャンベル公爵に任せるというのには違和感がある」
「戦後すぐのことです。兄の死と共に私は辺境伯となりましたが、軍人として身を立てていた自分に、領地経営の才はありませんでした」

 兄の死にショックを受けた兄の妻は倒れ、ハワードと共に屋敷に引きこもることとなった。アルドリッド辺境伯を支えてくれる人は、ほとんどいなかったのだ。

「戦地となったこの土地に援助をくださる上位貴族は大勢いました。その中でも、キャンベル公爵はことさら親切に、私に領地経営の手ほどきをしてくださったのです
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