引きこもり令嬢の契約婚約
「……状況証拠は揃っていると、……そう言いたいんだな」
深いため息とともに、ルパード王は一度沈黙すると、意を決したように顔を上げた。
「これ以降のキャンベル公爵の尋問は私がする。関係者は別室で待つように、オルセン侯爵、ついてこい」
「はっ」
ルパード王が立ち上がり、この件はエリオットの手から王の手へと移った。
「ふう。今回ばかりは重い処罰が与えられるんじゃないかな」
『なにより、キャンベル公爵自身に以前の覇気がないもの。加護を得たと思ってからの落胆が堪えたんでしょう、きっと』
ホワイティの言に、セアラはただ黙って頷いた。
一番の罰になるだろうと思ってはいたが、想像以上にダメージを受けていて、なんだか申し訳ない気までしてきた。
それにしても、あわただしい二日間だった。
移動中に攫われ、救出され、夜中の火災に対処し、強行軍で戻ってきたのだ。
「大変だったな、セアラ。お前が無事でよかった」
「お父様、ありがとうございます」
シーグリーヴ侯爵に温かいまなざしを向けられ、セアラは心からほっとした。
そのせいだろうか、急に力が抜けて、立っていられなくなる。
「大丈夫かい、セアラ」
隣に立っていたエリオットが支えてくれたので転ぶことはなかったが、支えてもらえてようやく立っていられるような状態だ。
「シーグリーヴ侯爵、よければセアラを休ませたい。今日は王城に泊めてもいいだろうか」
「我が家もそう遠くはありませんが」
「頼むよ。僕が心配だ」
侯爵はちらりとセアラに視線を送る。
「セアラはどうしたい?」
「泊まるまで行かなくてもいいのですが、……少し休ませていただければなと」
「よし、決まり」
エリオットはひょいとセアラを抱き上げ、うれしそうに頬を染める。
「エリオット様?」
「歩けないんだろう? 僕が連れて行ってあげるよ」
「殿下、私が、父である私が持ちます!」
「いいよ侯爵。腰を痛めたら大変だ」
「殿下―!」
シーグリーヴ侯爵の制止も聞かず、エリオットは意気揚々とセアラを抱きかかえ、メイドに用意させた客室へと運んだ。