引きこもり令嬢の契約婚約


 それから、エリオットとセアラは領地運営の為の準備にかかりきりだった。
 新たに学ばなければならないことも増え、日々は慌ただしく過ぎていく。

「最近、学校の派閥に変化があるんだよねぇ」

 朝食の席で、何気なくマイルズが話し出した。

「派閥?」
「アドレイド様が、家のごたごたですっかり立場がなくなって、あの学年はスリバーニ伯爵令嬢の派閥が出来上がったんだけど、どうも学園を牛耳る感じまではいかないんだよね」

 現在公爵家で在学中なのはアドレイドだけだ。侯爵家もソフィアの妹くらいだろう。

「ソフィア様の妹さんは? マイルズと同じ学年じゃなかった?」
「エスメ嬢は派閥に興味ないんだよ。よく図書館でひとりでいるよ。友達がいないわけじゃないけど、あんまり人といるのは好きじゃないみたいだ」
「そうなの」
「……まあ、かわいいんだけどね」

 飄々とした弟が、少し口ごもるのが珍しくて、セアラは身を乗り出した。

「なに? 気になるの?」
「そんなんじゃないよ! それよりさ、今話題になっているのはアドレイド嬢の方」
「話題ってどういうこと? さっき立場が無くなったって言っていたじゃない」

 学園内にも派閥に似たようなものはある。今のアドレイドの立場ならば、おとなしく無難に学校生活を過ごすしかないし、一度中心から外れてしまえば、話題にも上らないはずだが。

「ハワードがさ。あ、アルドリッド辺境伯家のやつなんだけど。まるで騎士みたいに付きっきりなんだ。いつも鼻で笑っているようなアドレイド嬢が真っ赤になっててさ。もともと美人だから、かわいくなったなって男連中の中じゃ大騒ぎだよ」
「まあ……」

 確かにハワードは、セアラが見ている限りアドレイドを守ろうと動いてくれているようだった。

(……ちゃんとアドレイド様を見てくれる人と、出会えたのかしら) 

 だったらいいなと、セアラは素直に思う。
 エリオットもネルも甘すぎると言うが、セアラは関わった人には幸せでいてほしいのだ。
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