引きこもり令嬢の契約婚約
「肩身が狭いんじゃなければよかったわ。それとマイルズ」
「なに?」
「オルセン侯爵家は、ソフィア様が後を継ぐ可能性が上がっているそうよ。だからエスメ嬢は嫁入りすることもできると思う」
「え……?」
「跡継ぎのあなたにも、チャンスはあるんじゃないかしら」

 マイルズの顔が一気に染まり、セアラは思わず噴き出した。

「ち、違うって言ってるだろ」
「そうかしら。あなた今、すごくうれしそうな顔しているけど」
「ち、違う!」

 マイルズと笑い合える日々も、もうじき終わる。寂しいけれど、それは一歩踏み出した証でもあった。

「姉さまこそ、浮かれてばかりじゃだめだよ。王太子妃になるんだから」
「分かっているわ。もっとたくさん勉強しないとね。この国がよくなるためにも」
「僕はずっと、姉さまって賢いなって思ってたんだ。だからきっと、姉さまなら大丈夫」

 母親を失った時、セアラが絶望せずにいられたのは、マイルズがいたからだ。
 きっと彼が信じてくれる限りは頑張れるだろうと思う。

「ありがとう、マイルズ」
「僕も卒業したら頑張るからさ、エリオット様の側近に推薦してよ」
「それはあなたの能力次第よ」
「ちぇー」

 すねた顔がかわいくてセアラが笑うと、ネルも出てきて肩までのぼり、小さな声を上げて笑う。
 この聖獣がもたらしてくれた幸せな時間に、感謝しながら。
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