引きこもり令嬢の契約婚約
*
エリオットから観劇の誘いが来たのは、それから数日後のことだ。
観劇中は離さなくていいので楽だが、とはいえ、そこに集まるのは貴族ばかり。野暮ったい姿でエリオットの隣に立てば、ろくでもない噂が流れるだろう。
(……行きたくないわね)
セアラは断る理由を三つくらい考え出したが、どれも父に阻まれた。
「いいか。お前に断る権限はない。侯爵家に生まれた者として、分かっているだろう? 幸い、どこがいいのかわからんが、殿下はお前を気に入ってくれているようだ。いいか、学はひけらかさず、おとなしく笑っているんだぞ」
「はあ」
(お父様もたいがい失礼ね。私がいつ、学をひけらかしたっていうのよ。それにオズボーン王国に留学までしたエリオット様に学で敵う訳がないじゃないの)
セアラはそう思ったが、追及するのはやめた。父との問答に終わりなどない。何を言っても言い返されるとわかっているのだから、最初から口をつぐむが勝ちだ。
「……お父様は、私とエリオット様が並んでいたら、釣り合わないとは思いませんか」
一級品のドレスに身を包みながら、群衆に紛れてしまいそうな花の無い自分を鏡で見ながら、セアラはため息をつく。
「お前はブリジットに似て、かわいい顔立ちをしているよ。足りないのは自信だ。おどおどしていては魅力が損なわれて当然だ」
ブリジットは母の名前だ。
思ってもみなかった返事に、セアラが言葉を失くしていると、父は咳ばらいをして背中を向けた。
エリオットから観劇の誘いが来たのは、それから数日後のことだ。
観劇中は離さなくていいので楽だが、とはいえ、そこに集まるのは貴族ばかり。野暮ったい姿でエリオットの隣に立てば、ろくでもない噂が流れるだろう。
(……行きたくないわね)
セアラは断る理由を三つくらい考え出したが、どれも父に阻まれた。
「いいか。お前に断る権限はない。侯爵家に生まれた者として、分かっているだろう? 幸い、どこがいいのかわからんが、殿下はお前を気に入ってくれているようだ。いいか、学はひけらかさず、おとなしく笑っているんだぞ」
「はあ」
(お父様もたいがい失礼ね。私がいつ、学をひけらかしたっていうのよ。それにオズボーン王国に留学までしたエリオット様に学で敵う訳がないじゃないの)
セアラはそう思ったが、追及するのはやめた。父との問答に終わりなどない。何を言っても言い返されるとわかっているのだから、最初から口をつぐむが勝ちだ。
「……お父様は、私とエリオット様が並んでいたら、釣り合わないとは思いませんか」
一級品のドレスに身を包みながら、群衆に紛れてしまいそうな花の無い自分を鏡で見ながら、セアラはため息をつく。
「お前はブリジットに似て、かわいい顔立ちをしているよ。足りないのは自信だ。おどおどしていては魅力が損なわれて当然だ」
ブリジットは母の名前だ。
思ってもみなかった返事に、セアラが言葉を失くしていると、父は咳ばらいをして背中を向けた。