引きこもり令嬢の契約婚約【※番外編更新中です】
 ホールデンと言えば、歴史の長い伯爵家だ。敬意をこめてそう呼ぶと、レナルドはくしゃりと破顔した。

「レナルドとお呼びください。俺は次男で、爵位を継ぐわけではありませんから」
「そうなの? 今おいくつ?」
「二十歳になります。以前は騎士団に二年ほど所属していました」
「騎士団……近衛騎士団ね」

 内務大臣である父が引き抜いたのならば、王族や高位貴族の護衛を行う近衛騎士団からだろうとあたりを付けて聞いてみると、レナルドは素直に頷く。

「王太子妃候補のお嬢様を護衛できるなんて光栄です」
「……そう。よろしくね。ほら、エスメ、あなたもちゃんとご挨拶して」
「よ、よろしくお願いいたします」

 ようやく顔の前から本を離し、エスメは彼に笑顔を返す。
 姉と話している間に、危険な人物ではないと判断したのだろう。妹には、こういう慎重なところがあるのだ。

(ふたりの護衛にしたのは、そういう理由なのでしょうね。エスメが自然に慣れるために……)

 ソフィアは、父の目論見にすぐに気づいた。
 彼はおそらく、妹のお相手候補なのかだろう、と。



 翌日以降、レナルドは姉妹の乗る馬車を警護するよう、馬に乗ってついてきた。校門で馬車を降り、そこで姉妹が校舎に消えるまで見送って、戻る。
 正直、いてもいなくてもいい程度の護衛だが、レナルドはにこにことその役目を全うしている。

「昼間とか何をしているのかしらね」

 呆れてつぶやけば、エスメはぽそりとつぶやく。

「お庭の階段を直してくれたのはレナルドお兄様らしいです」
「そうなの?」

 先日、中庭に降りる階段の一部がささくれていて、ドレスの裾をひっかけたことがあった。

「レナルドは、使用人がする仕事みたいなことまでするの?」
「お屋敷のメイドによると、お兄様はなんでも手伝ってくださるそうです」
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