引きこもり令嬢の契約婚約【※番外編更新中です】


 授業が終わり、ソフィアは昇降口でエスメを待つ。
 妹はソフィアに似ず、おとなしく、やや鈍くさい。廊下の端からソフィアに気づくと、小走りにやってきた。

「エスメ、急がなくていいわ」
「お待たせして……きゃっ」

 足がもつれて、エスメは前のめりに倒れる。

「エスメ! 大丈夫」

 ソフィアは慌てて駆け寄り、彼女を起こしてあげた。

「ごめんなさい。……私っていつもこう。鈍くさくて、迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「迷惑だなんて思ってないわ。ただ、心配しているの。怪我をしてほしくないのよ」
「ごめんなさい。ありがとう、お姉さま」

 エスメは顔を赤らめて、よれてしまったスカートを直した。
 おっとりとしていて放っておけない。それが、人がエスメに感じる印象だろう。
 ソフィアもそう感じているし、素直に感謝を表すエスメには、どうにも庇護欲が湧き上がる。

(お父様はそれを見越して、エスメの婿に侯爵家を継がせようとしているのかしら)

 エスメが相手で、侯爵家当主の座が約束されているのならば、婿入りしようという男はいくらでもいるだろう。

(そしてお父様のお眼鏡にかなったのが、レナルドってこと?)

 ソフィアはやや腑に落ちない。レナルドは無害な男ではあるが、別に有能そうには見えないからだ。

(お父様が認めるような才覚があるようには思えないのだけれど……)

 それでも、ソフィアを王太子妃にしようとしているからには、次期オルセン侯爵はエスメの夫がなるのだ。

(エリオット様が言うように、私がオルセン侯爵になるためには、障害がいくつもある。まずは、王太子妃候補から外れること、次に、女性の爵位継承を国に認めさせること、そして、エスメの夫に、私の方が能力が上だと認めさせること)

 どれも簡単なことではないし、最初のふたつは自分だけの力では不可能だ。しかし、最後のだけは、人の手を借りずともできる。

(まずは、レナルドに私の有能さを見せつけてやりましょう)

 ソフィアは心の中でそう決意する。
 いずれ婿入りするつもりで護衛をしているのならば、本当に申し訳ないとは思うが、ソフィアも自分の人生を妥協するのはもう嫌なのだ。
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