引きこもり令嬢の契約婚約【※番外編更新中です】
校舎を出ると、馬車の傍に赤髪の騎士が笑顔で待っている。
「お嬢様方、お疲れ様です。今日はお楽しみがありますよ」
「まあ、なにかしら」
馬車に乗せてもらいながら、エスメがうれしそうに笑う。
十三歳のエスメに対して二十歳のレナルドは年上すぎないかと思ってはいたが、こうしてみれば結構お似合いだ。おとなしいエスメが、レナルドにはすっかり懐いている。
(さすがはお父様……なのかしら)
「ほら、お嬢もどうぞ」
手を差し出され、ソフィアは少しからかってやりたい気分になった。
「あててみましょうか。甘いものね。ケーキかしら」
「えっ、お嬢すごいですね」
「それも特別なやつね、メルトールの、一番人気の!」
「なんでわかるんですか!」
あまりにも素直に驚かれて、ソフィアもつい笑ってしまう。
「あははっ。実は昼休みに見えたのよ。あなたがお使いしていたのが」
「なんだ。お嬢は千里眼でもあるのかと思いました」
くしゃりと表情を崩すレナルドに、ソフィアは一瞬どきりとする。
こんなに表情豊かでは、貴族社会を生き延びることなどできないと思いながら、彼には笑顔が似合うとも思う。
じっと顔を見ているソフィアを不思議そうに眺めながら、レナルドは笑った。
「帰ったらお茶にしましょうね。扉、閉めますよ。エスメ様もお嬢もちゃんと座ってください」
「ちょっと待って、うっかり聞き流していたけど、お嬢って呼び方はなんなの」
今朝までは、ちゃんと名前に様づけで呼んでいたはずだ。