引きこもり令嬢の契約婚約【※番外編更新中です】
「ソフィア様だと長いなと思いまして」
「そんなに長くないでしょうよ。それに、どうしてエスメはそのままなの」
「ふたりともお嬢と呼んだら、どちらを呼んでいるのかわからないじゃないですか」

 だからと言って、なぜ省略されるのが自分の方なのか、ソフィアには納得がいかない。

「ほら、後が詰まると皆さん帰宅が遅くなります。閉めますからちゃんと座っていてくださいね」

 有無を言わさず扉は閉められ、馬車はゆったりと走り出す。小窓から覗けば、レナルドが、後ろに並んでいた馬車の御者に頭を下げている姿が見えた。

「ふふ。レナルドお兄様は、お姉様と打ち解けているのですね」
「あれは打ち解けているとは言わないわ。敬意が足りないというのよ」

 にこにことほほ笑んでいるエスメに、教えてやりたいくらいだ。
 レナルドはお父様が見つけてきた次期オルセン侯爵候補で、あなたの婿になる予定なのだと。

(でも、今そんなことを言ったら、エスメに警戒させるだけだものね)

 だから今は黙ってやり過ごすことにした。
 揺れる馬車の中で、メルトールのケーキに思いを馳せる。
 なんだかんだと、ソフィアも甘いものは好きなのだ。
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