引きこもり令嬢の契約婚約【※番外編更新中です】


 屋敷につき、エスメとソフィアは着替えをする。
 天気のいい日は、庭でティータイムを過ごすので、動きやすいよう簡素なワンピースを選んだ。
 いつものように中庭のガゼボを整えているメイドと、レナルドがにこやかに話している。

(……本当になじんでいるわね。それにしたって随分親しげじゃない?)

 不快に感じるのは、きっと、レナルドがエスメの夫候補だと思えばこそだ。
 長女であるソフィアは、父から厳しく躾けられた。そのソフィアに、いつも心配そうに寄り添ってくれたのがエスメだ。
 なぜエスメだけはゆったり過ごすことを許されるのかと、反感を持っていた時期もあるが、まっすぐに愛情を示す妹に、そんな意地悪な気持ちは続かなかった。やがてソフィアは、妹だけは幸せになってほしいとそう願うようになったのだ。

(浮気癖なんかあったら困るからね!)

 やがてレナルドはその場を離れ、メイドはソフィアたちを呼びに来る。

「お嬢様、準備が整いましたよ」

 言われて向かえば、テーブルに乗せられた皿は二つだけだ。

「……レナルドは?」
「レナルド様は、厩の方に行くと」
「呼んできてちょうだい」

 メイドは頭を下げると、すぐにレナルドを呼びに行く。そしてやってきたレナルドは、不思議そうに目を丸くしていた。

「どうしました、お嬢様方」
「あなたが買ってきたケーキでしょう? 食べたかったんじゃないの?」

ソフィアの脳裏に浮かぶのは、ニコニコと軽い足取りで歩く昼間のレナルドの姿だ。きっと楽しみにしていただろうに。
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