引きこもり令嬢の契約婚約【番外編も完結】
「お嬢」

 レナルドが戻ってくると、男はぎょっとしたように彼を見た。
 レナルドは背が高いので、人によっては威圧的に感じるらしい。

「私の護衛なの。レナルド・ホールデンです」
「よろしくお願いいたします」

 伯爵令息は、彼がお付きの人間だと認識すると鼻を鳴らす。

「悪いが、今ソフィア嬢は僕と会話中だ」
「申し訳ありません。その前に先約がありまして……。お嬢、こちらへどうぞ」

 レナルドはそう言うと、ソフィアを男から引き離す。
 伯爵令息は、無礼なレナルドに不快そうにしつつ、立ち去った。
 するとレナルドは口元を緩ませ、ソフィアにそっと皿を渡す。

「せっかく冷たいのを出してきてもらったので、お早めにどうぞ」

 ソフィアは皿を受け取り、内心呆れながらも、レナルドをじっと見上げる。

「あのね。こういう時に優先すべきは、貴族と交友関係を広げることであって……」
「小言も後で。ほら、食べてください」

 珍しく強い押しに負けて食べると、確かにとびっきりおいしい。呆れていたはずなのに、思わず顔が緩んでしまった。

「ね。その顔が見られると思ったんです」
「その顔って……」
「お嬢、おいしいものを食べているときだけ、ちょっと素が出るんですよ。気づいていましたか?」
「はあ?」

 なにを言っているのだ、この男は。
 でも言われてみれば、口元は緩んでいたかもしれない。食べていると扇では隠せないから、思い切り見られたかも。
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