引きこもり令嬢の契約婚約【番外編も完結】
「今日は帰ったらお楽しみがありますよ」

 背中から聞こえるレナルドの声は明るい。

(また、新作のケーキでも見つけたのかしら)

「おかえりなさい、お姉様」

 出迎えてくれたエスメが、楽しそうに手を引いてソフィアを連れていく。

「どうしたのよ、エスメ」
「早く食事にしましょう。ね、レナルドお兄様」
「ええ。俺、厨房に声をかけて来ますね」

 なんだか今日はエスメとレナルドが仲良しだ。
 その日の夕食は少なめで、不思議に思っていたらデザートが出てきた。

「ほら、お嬢、デザートです」
「今日のはどこの?」
「いいから、まずは食べてみてください」

 レナルドだけじゃなく、エスメまでにこにこしている。

(二人で新しいお店でも開拓したのかしら。ちょっとおもしろくないわね)

 あまりにも期待の目で見られているので、ソフィアは神妙な表情でケーキをフォークで切り分け、口に入れる。
 レモンのケーキだ。甘いのに、すっと酸味が広がってさっぱりしている。

「……おいしい!」

 思わず表情を取り繕うことさえ忘れてしまった。食後に食べているのに重たくなく、程よい甘さが一日の疲れを忘れさせてくれる。

「ねぇ、すごくおいしいわ。これはどこの新作?」
「ふふ。実はお姉様、これはレナルドお兄様が作ったのよ」

 なぜかエスメが得意そうにいい、ソフィアはすぐにレナルドを見た。
 ドキリとするほど優しい瞳を細めて、笑っている。

「レナルド、ケーキを焼けたの?」
「実はずっと前からシェフに習っていたんですよ。お嬢、ケーキが一番好きでしょう? お仕事も大変でしょうから、疲れたとれるものを用意したくて」

 なんと。ついに買ってくるだけじゃなくて、自分で作るようになるとは。

(護衛騎士ってそんなことするかしら。しないわよ。どっちかというともう執事みたいなのよね、レナルドは)
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