引きこもり令嬢の契約婚約【番外編も完結】
「これが今日のとっておきだったのね。ありがとう、おいしいわ」
「お嬢のその顔が見たかったんです」

 レナルドは、「さ、最後まで食べてくださいね」と笑っている。
 そしてソフィアがそれを堪能しているうちに、いつの間にかエスメや使用人がいなくなっていた。

「満足してくれました?」
「ええ。毎日でも食べたいくらいよ」

 皿を空にしてフォークを置いて正面を見れば、思いのほか真面目な顔のレナルドがそこにいた。

「……え?」

 完全に油断していた。これは何か真面目な話をする空気だ。
 さっきまでただのリラックスタイムだったのに、急すぎてついていけなかった。

「お嬢」
「な、なに?」

 心臓の鼓動が、徐々に早くなっていく。

「俺がいると、便利でしょう? お嬢の健康状態を把握していますし、お疲れの際にはおいしいデザートも用意できます。もちろん、カロリー計算もばっちりですよ」
「そ、そうね」

 レナルドが何を言いたいのか、まったくつかめない。

(なに? 賃上げ交渉? でもそれの最終決定権はお父様にあるんだけど)

「俺がいなくなったら、困りますよね?」

 急にレナルドの眉毛が下がる。真顔にドキリとさせられた後に、子犬みたいな動きをするのはやめてほしい。

「もちろんよ。困るわ。……さっきから何なの? 簡潔に要望を言いなさい」
「要望は……俺をずっとそばに置いてほしいんですよ」
「あなたを解雇する予定なんてないわ」
「侯爵様が俺をいらないと言っても、そう言ってくださいますか?」

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