引きこもり令嬢の契約婚約
 セアラと町の子供たちで作った図鑑は、一年ほどかけてようやく完成した。
 子供たちがそれを回し読みしていると、大人たちも徐々に興味をもつ。
 いつしか、みんなが『体にいいなら村で栽培しよう」と言い出し、結構な面積の薬草畑があるのだ。


「……っていうことがあったんです。芸術とは少し違いますけど、基本の教育をすることによって、文化面が広がることはあるかなと」

 セアラの言葉に、エリオットは興味深そうに頷いた。

「文字が読めない子供がいるとは知らなかった。教育施設は、大小はあれど、各地区にいきわたっていると思っていたから」

「施設はあるんです。それこそ、王家主導で整備してくださったと聞いています。でも、行くか行かないかは親御さんに委ねられているので」

「一定の年齢までは義務化するべきかもね……」

 エリオットは本当に驚いたようだ。貴族の子の多くは、王都にある王立学園に入学する。多くの教科を取り扱い、望めばどのようなことも学べる環境で育てば、そうじゃない環境については思いも寄らないのだろう。

 セアラだって、田舎にいた時期が無ければわからなかった。

「……君は、物知りだね。引きこもりって聞いていたけど、そんなことないな」

「いや、私は引きこもりですよ。夜会が苦手で、理由をつけてさぼっているので、父からはすごく怒られます」

「夜会は、貴族間の情報はすごく手に入るけど、君が持っているような情報は手に入らない」

 エリオットは断言し、セアラの手をそっととる。
 家族以外の男性から手を取られることはないセアラは、それだけで固まってしまい、考えていたことが全部吹っ飛んだ。

「え、あ。あわ……」

「君の言ったとおりだね」

「え?」

「君と僕の情報を合わせれば、大体を網羅できるって」

 ぱちりとウィンクをされて、セアラの心臓が大きく跳ねる。麗しい顔で愛敬を振りまくのはやめてほしい。

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