引きこもり令嬢の契約婚約
 その頃には、セアラの不在に気づいた侍女が、半泣きでセアラを探し回っていて、見つかった途端に大泣きされた。
 セアラはまず温かい風呂に入れられて、怪我がないか、体をくまなくチェックされ、無事を確認されたところでしこたま怒られた。

「奥様にお伝えする前に見つけられてよかったです。お嬢様に何かあったら、その方がよっぽど奥様の命にかかわりますからね」
「……ごめんなさい。もうしない。でも、これでお母様の薬が作れるわ」

 セアラが薬を仕上げた頃、街では不思議な現象が起こっていた。
 金色の光を含んだ風が吹き荒れて、何事かと窓を開けた家の病人が、みるみる回復したというのだ。

 数日後、街の方が落ち着いたからとやってきた医師は、「まるで奇跡です」と言っていた。

「あれはもしかすると、エリオット殿下の聖獣かもしれませんな」
「聖獣?」
「ええ。セアラ様もご存じの通り、我が国の王族は聖獣の加護を得るのです」

 それはセアラも知っている。しかし、今上陛下のご息女のフィオナ姫は、聖獣の加護を得られなかったと聞いている。

「エリオット殿下は今年十三歳。加護の儀式を先日済ませたそうです。それが白いフクロウで、薬づくりの名人なのだとか」
「白フクロウ!」

 だとすれば、セアラを助けてくれたフクロウは、エリオット殿下の聖獣なのだ。

(すごいすごい! 聖獣に助けてもらったんだ)

「ホワイティ様にいつか会って、お礼が言いたい」

 しかし会う機会は訪れず、それから一年後、セアラの母は病で儚い人となった。
 セアラとマイルズが王都の父のもとに戻ってきたのは、それからしばらくしてのことである。
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