引きこもり令嬢の契約婚約
*
セアラを屋敷まで送り、城に戻った時には陽は暮れかかっていた。食事や入浴を済ませ、落ち着いたところで、エリオットはバルコニーに出て夜空を見上げる。
「ホワイティ。出ておいでよ」
がさりと木が揺れる。白い羽が密集した葉の間からちらりと見えた。
ケンカ中とはいえ、ホワイティがエリオットの傍を離れることはあまりない。ここ数日間、エリオットはずっと、ホワイティの気配を感じていたのだ。
手を掲げると、ホワイティは一度そっぽを向いたものの、しばらくするとゆっくりと旋回して腕に止まった。しかしまだ怒っているのか、すぐにプイとそっぽを向く。
「会いたかったよ、ホワイティ。顔を見せてよ」
『甘いことを言っても駄目よ。私はまだ怒っているんだからね』
「怒っているんじゃなくてすねているんじゃないか」
笑うエリオットの服を、ホワイティは不満げにつついた。
「心配しなくとも、今回の婚約は、形だけだよ。……父上には内緒だからね」
声を潜めてそう言うと、ホワイティはピクリと耳を傾けた。
「彼女──セアラ嬢は僕のことが好きなんじゃなくて、君に会いたいから、婚約者役を引き受けてくれたんだ」
『私に?』
ホワイティが首だけをエリオットの方に向ける。
「君のことを尊敬しているんだって。昔、疫病を収束してくれたことを感謝しているらしい」
『……そうなの』
声のトーンが少しおとなしくなる。ホワイティはしばらく考え込んでいるのか黙っていたが、ふいに頭を上げた。
『でもっ、私は認めないわよ。エリオットの婚約者なんて』
「そう? でも僕は、君を好きだって言う人を嫌いにはなれないな。セアラ嬢はいい子だと思う。僕は好きだよ」
ホワイティは不快を正直に態度に表し、喉の奥を鳴らした。
分かってはいるのだ。エリオットが王太子である以上、いつかは妻を娶り、子をもうけなければならないことは。
『……私より好きなの?』
小さな声でホワイティが尋ねる。
エリオットは驚いたように息を飲んだが、その後ゆったりと笑った。
セアラを屋敷まで送り、城に戻った時には陽は暮れかかっていた。食事や入浴を済ませ、落ち着いたところで、エリオットはバルコニーに出て夜空を見上げる。
「ホワイティ。出ておいでよ」
がさりと木が揺れる。白い羽が密集した葉の間からちらりと見えた。
ケンカ中とはいえ、ホワイティがエリオットの傍を離れることはあまりない。ここ数日間、エリオットはずっと、ホワイティの気配を感じていたのだ。
手を掲げると、ホワイティは一度そっぽを向いたものの、しばらくするとゆっくりと旋回して腕に止まった。しかしまだ怒っているのか、すぐにプイとそっぽを向く。
「会いたかったよ、ホワイティ。顔を見せてよ」
『甘いことを言っても駄目よ。私はまだ怒っているんだからね』
「怒っているんじゃなくてすねているんじゃないか」
笑うエリオットの服を、ホワイティは不満げにつついた。
「心配しなくとも、今回の婚約は、形だけだよ。……父上には内緒だからね」
声を潜めてそう言うと、ホワイティはピクリと耳を傾けた。
「彼女──セアラ嬢は僕のことが好きなんじゃなくて、君に会いたいから、婚約者役を引き受けてくれたんだ」
『私に?』
ホワイティが首だけをエリオットの方に向ける。
「君のことを尊敬しているんだって。昔、疫病を収束してくれたことを感謝しているらしい」
『……そうなの』
声のトーンが少しおとなしくなる。ホワイティはしばらく考え込んでいるのか黙っていたが、ふいに頭を上げた。
『でもっ、私は認めないわよ。エリオットの婚約者なんて』
「そう? でも僕は、君を好きだって言う人を嫌いにはなれないな。セアラ嬢はいい子だと思う。僕は好きだよ」
ホワイティは不快を正直に態度に表し、喉の奥を鳴らした。
分かってはいるのだ。エリオットが王太子である以上、いつかは妻を娶り、子をもうけなければならないことは。
『……私より好きなの?』
小さな声でホワイティが尋ねる。
エリオットは驚いたように息を飲んだが、その後ゆったりと笑った。