引きこもり令嬢の契約婚約
「比べたことなんてないよ。ホワイティは僕の守護聖獣で、セアラ嬢は利害が一致した契約婚約者だ」
『ふん。知っているのよ、エリオット。あなた、あの子のこと、結構気に入っているでしょう。今日だって楽しそうにしていたじゃない』
「え」

 ぎくりと、エリオットが目をそらす。

『それに、いくら侯爵家とは言え、あっちから婚約破棄することなんてできないわ。エリオットから断っても、令嬢には悪評が付く。それが分かっているのに、あなたが契約婚約なんて持ち掛けるとは思えないわ。契約期間中に本気にさせるつもりなんでしょう?』

 さすがはホワイティ。エリオットの意図は察しているらしい。

「なんだ。分かっているんだ」

 飄々とエリオットが答える。かつての泣き虫殿下は、今はいっぱしの策士だ。

「いつかは結婚しなければならないのなら、彼女がいいって思っただけだよ。アドレイド嬢は論外だし、ソフィア嬢とは気が合わない。最初は消去法の結果彼女だったけど、今は良い選択だったなって思っているよ」
『あーもう! そんな話聞きたくないわ!』

 飛び立とうとするホワイティを「待ってよ」と呼び止める。

「そこまで言うなら、見合いをしている間に、君が出てきてあげればよかったんだよ。彼女、君に会いたくてあの話を了承したんだから。そうしたら僕は打つ手がなくて、あの時点で彼女を逃がすしかなかったのに」

 見合い中もホワイティの気配はそこはかとなくしていた。彼女は一部始終を見ていただろうし、話も聞いていただろう。

『……私だって、エリオットがいつか結婚することくらい分かっているわ。でもまだ嫌なの。まだ私だけのエリオットでいてほしいの。だから虫よけになるなら、婚約まで許してやってもいいわって思ったのよ』

 優しくエリオットの指を噛むと、ホワイティが飛び立っていく。 
 その姿を見送って、エリオットは小さくため息をついた。
 気が強いけれど心優しいホワイティ。泣き虫だったエリオットを、大事に見守っていてくれた大事な相棒だ。

「君もきっと気に入るよ。ホワイティ」

 脳裏にセアラの姿がよみがえり、エリオットは自然とほほ笑んだ。
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