引きこもり令嬢の契約婚約

王太子様の結婚事情

 ブライト王国第一王子・エリオットは、本日二十歳の誕生日を迎える。
 ブライト王国では、王族の誕生日だからといって、国を挙げての式典を行うことはない。
 正午ぴったりに王城のバルコニーから挨拶をし、国民に顔見せをすれば終わりだ。夜には家族だけでの晩餐が行われるが、姉のフィオナが嫁いでからは、行わないことの方が多い。
 この日もバルコニーでの挨拶を終え、エリオットは早々に自室に戻ろうとしていた。
 呼び止めたのは彼の護衛騎士のローランドだ。

「殿下。陛下がお呼びだそうです」

「父上が?」

 怪訝に思いつつ、エリオットは踵を返し、父の執務室へと向かった。

「父上、エリオットです」

「入れ」

 王の執務室は広い。一番奥に国王の執務机があり、宰相の机と補佐官の机が、入り口に向かって並んでいる。
 エリオットが中に入ると、奥の机にいた国王が顔を上げた。そのわきに立つ宰相と、三人の補佐官が立ち上がり、そろってエリオットに礼をする。
 南側にある窓は大きく開け放たれていて、気持ちのよい風が入ってきていた。
 国王を加護する聖獣は鷹なので、出入りしやすいように開けてあるのだろう。

「よく来たな。エリオット。話がある。まずは誕生日おめでとう」

「ええ。ありがとうございます」

「それでな。お前の結婚相手のことだが……」

 矢継ぎ早に本題に入る国王を前に、エリオットはわずかに眉をひそめた。
 父が、エリオットに縁談の話を持ち出すのは、これが初めてではない。
 十八歳の時、姉の嫁ぎ先であるオズボーン王国に留学する際に、婚約者を決めてから行くようにと言われたのが最初だ。
 しかし、当時結婚する気などなかったエリオットは、妙齢の女性を一年間の留学中放置するのは嫌だと切々と語り、断った。
 仕方なく了承した父は、留学から戻ったエリオットに再び縁談話を持ち掛けた。その時は、学んだことを国政に活かすため、しばらくは執務に集中したいと理由をつけて断った。

(今度は誕生日をきっかけにしてきたか……。何を理由にして断ろうかな)

 父とエリオットの攻防戦に終わりは見えない。しかし、年数が経てばたつほどエリオットの方が不利にはなる。世継ぎであるエリオットには、子孫を残す責務があるのだから。
< 4 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop