引きこもり令嬢の契約婚約

「もう待たないぞ。結婚は後にするにしても、婚約者だけは決めなければ、お前と年代の合う令嬢が、皆既婚者になってしまうではないか」

「それはそうかもしれませんが、しかし……」

 途端に、執務室内に突風が吹き荒れる。

『なっ、何を言っているのよ。エリオットが結婚? 駄目、駄目ようっ』

 バサバサと翼をはためかせ、窓から入ってきたのはシロフクロウ──エリオットに加護を与える聖獣・ホワイティ──だ。
 聖獣の声は、聖獣の加護を得ている者にしか聞こえないので、この場では、王とエリオットしか、ホワイティの言葉を理解できない。宰相をはじめとした側近が、何事かと目を丸くして、興奮するシロフクロウを見つめている。

「ホワイティ? 落ち着きなさい」

『いやよ、王様。私のエリオットになにをさせる気なの?』

 ホワイティの羽から捲き散らかされる風は、書類を吹き飛ばすだけではなく、室内の調度類さえもなぎ倒す勢いだ。補佐官が、必死の形相で書類棚を押さえているのが気の毒でならない。

「落ち着くんだ。君がエリオットに加護を与えてくれていることは感謝するが、エリオットが結婚しなければ、我が国の歴史が途絶えてしまうではないか」

 国王は重厚な机にしがみつきながら、ホワイティを落ち着かせようと必死に言葉を紡ぐ。しかし、ホワイティは止まらないどころかまずまず強い風を吹かす。

『フィオナの子供をひとり連れてこればいいじゃない!』

「それではオズボーン王国にのっとられるではないか」

 もはや国王は吹き飛ばされそうだ。宰相が必死に王の腰を掴んで押さえている。

「落ち着いてください、父上、ホワイティも」

 エリオットが落ち着いた口調で言うと、ホワイティは嬉々として彼の腕に止まりにいった。同時に突風も収まり、床には倒された調度類が無残に広がっていた。
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