引きこもり令嬢の契約婚約

 夕食の席には、マイルズも父もそろっていた。

「どうだった。エリオット殿下とのデートは」
「意外。本当に婚約する気なんだ、姉さま。また理由をつけて逃げるかと思っていた」

 さすがは弟。セアラの行動パターンは把握しているのだろう。
 対エリオットに関しては、セアラ自身も予想外なことばかりだ。

 ちなみに、エリオットとセアラはまだ正式に婚約したわけではない。
 なにせ一国の王子の婚約だ。正式な婚約式を行わなければならず、準備期間が必要だと聞いている。
 エリオットの言う契約期間は、数か月後に行われるであろう婚約式から一年ということになるだろう。

(約一年半ってところかしら。一度一緒に出掛けただけで、周りはこうだもの。先が思いやられるわ)

 いくらエリオットへの好感度が上がっているとはいえ、セアラにとって、王太子妃というのは過ぎた立場だ。可能なら、婚約式の前に逃げ出したいという思いはないわけではない。
 それに、こんなに喜んでいる父を見てしまうと、婚約破棄後の落胆を思って申し訳なくなる。

(軽率過ぎたわ……)

 しかし、今さらそう思っても、後の祭りだ。

「劇はとてもよかったです」

 当たり障りのない返事をして、表情も少し抑え気味にする。

「内容を聞いているんじゃない」
「殿下とも普通にお話しました。……他の男の方よりは話しやすい方だと思っています」
「そうか。エリオット殿下は優しい方だからな」

 父の顔に、安堵の色が見受けられる。

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