引きこもり令嬢の契約婚約
「まあよかったよ。姉さまを学校以外で外に連れ出せる人がいるとは思ってなかったから。相手がエリオット様……ってとこが驚きだけど」

 弟の発言に、セアラは一瞬かちんときたが、表情を見れば安堵しているようだったので、文句を言うのは控えた。
 なんだかんだと、父も弟も、セアラが引きこもっていることを心配はしていたのだろう。

「それよりマイルズに聞きたいことがあるの。アドレイド様からお茶会に招待されてね。あの方、あなたのひとつ年上でしょう? 学校での評判とかどうかしら」
「キャンベル公爵令嬢のこと?」

 マイルズは一度目を泳がせて、わずかに口元を引きつらせた。

「うーん。まあ、公爵家のお嬢様だから物言いが尊大なのは仕方ないのかなぁ。いつも取り巻きを引き連れて歩いているよ。王太子妃になるのは自分だって前から言っていたから、今回の件はショックだったんじゃない?」

(言いそう。まあ、エリオット様との年齢差と家格を考えれば三人に絞られてしまうものね)

 家格が上とは言え、ソフィアを出し抜けると思っていたのならすごい自信だ。

「お茶会ねぇ。姉さまじゃ口で負けそうだよね。頑張って!」
「あはは。……ありがとう」

 余計に気が重くなってきた。なぜ自分は招待を受けてしまったのだろうとまで思う。

(最悪は当日仮病で……ううん。それは用意してくれたアドレイド様に失礼だわ)

 以前はよく使っていた手だというのに、なぜか気が進まない。

(なんだろ。私の中で何が変わったんだろう)

『セアラ嬢も、疫病から民を救ってくれたうちのひとりだ』

 エリオットの言葉が何度も頭に蘇る。
 もしそうなら。こんなに情けない自分でも、人の為になれたのなら。それはとてもうれしいし。だったら恥ずかしくない自分でいたい。
 なぜか今日のセアラはそんな風に思ったのだ。
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