引きこもり令嬢の契約婚約
 その時、慌てた様子でメイドがひとりやってきた。

「あ、あの。お嬢様。オルセン侯爵令嬢がお越しです」
「は? ソフィア様なら今日は欠席だと……」
「事情が変わりまして。急遽お邪魔させていただきましたわ」

 後ろから赤毛の騎士を連れたソフィアが現れる。

「急でごめんなさいね。こちら、お詫びのお菓子なの。たくさんあるからメイドの皆さんも召し上がって?」
「まあ、メルトールのクリームパイ! 今一番の人気店じゃありませんか」
「ええ。慌てて並んできたのよ。よかったわ。まだはじまっていないようですわね。改めて、本日はお招きありがとうございます。アドレイド様」

 アドレイドがけたたましく話していたこともあり、まだお茶も菓子も出されていない。
 メイドはホッとしたように準備をはじめ、すぐにソフィアの席も用意された。
 その間、アドレイドは不服そうに眉を寄せていた。

「ごきげんよう。セアラ様」
「お、お久しぶりです。ソフィア様」

 ソフィアと会うのは学園の卒業以来だ。学園時代も特に仲が良かったわけではない。ソフィアの周りにはいつも友人がいたし、セアラの友達は本だ。用事がなければ話すことも無かった。

「アドレイド様、お顔が固まっておりますわ」

 ふふ、と上品に笑うソフィアに、アドレイドは顔を真っ赤にし、「準備が整うまで少し失礼しますわ!」と出て行ってしまう。

 誰もいなくなると、あっけにとられたまま一部始終を見ていたセアラに、ソフィアが耳打ちした。

「まさか、あなたがお茶会に出てくるとは思わなかったわ。すっかり予定が狂っちゃったじゃない」
「え?」

 まるで、セアラがきたから、自分も来たと言いたげだ。

「このこと、エリオット様には言ったの?」
「いいえ。ただのお茶会ですし……」
「馬鹿ね。アドレイド様はあなたをつぶしにかかるつもりよ。ここは私に任せて頂戴」
「あの……」
「お待たせいたしましたわ」

 話している途中で、アドレイドが戻ってくる。
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