引きこもり令嬢の契約婚約
 すぐにお茶の準備が整えられ、紅茶のいい香りが漂ってきた。ソフィアが買ってきたクリームパイと元々用意されていたと思われるクッキーが並べられた。

 どちらもおいしそうで見た目もかわいらしい。

(……やっぱりハーブは場違いだったわ)

 セアラは素直に反省する。これまで、友人らしい友人もおらず、小規模なお茶会でさえ初めてなのだ。知らないことが多すぎることを実感したし、経験の重要性を思い知らされる。

(ソフィア様はすごいなぁ)

 堂々とした立ち居振る舞い。アドレイドだけでなく、周囲のメイドたちにも気を使いながら言葉を発している。なぜ今セアラを助けようとしてくれるのかはわからないが、それが本当だと信じて甘えることにする。彼女から学べることは多いだろう。

「どうぞ召し上がって」

 アドレイドの言葉と共に、ソフィアはカップを傾ける。そしてアドレイドがお菓子に手を付けたのを見てから、「私たちもいただきましょう」とセアラを促した。

 しばらくは、アドレイドとソフィアの間で、茶葉の話や有名な菓子店の情報交換が続く。そのうちに、ソフィアが話を切り替えた。

「アドレイド様。今日はエリオット様のお相手候補を集められたのですね」
「え、ええまあ」
「選ばれたのはセアラ様でしたが、私たちだって、これから国を支え助け合う仲間ですものね。親睦を深めるべきです。そのためにお茶会を主宰してくださるなんて、さすがアドレイド様だわ」
「そ、そんなことは……なくてよ。ほほ」

 アドレイドの顔が引きつっている。
 実際は先ほどのように、セアラに文句を言いたかっただけだろうから、気まずいだろう。
 セアラはアドレイドの心情を考えて、なぜか自分の胃が痛くなってきた。
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